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研究事例3
 
 1分子単位で検出・操作するデバイスの開発
 
Micro/Nano biotech Project(wiht CIRMM/LIMMS)
 
超微小溶液チャンバーの開発  
 
1分子のF1-ATPaseを逆回転したとき期待されるATPの分子数を見積もろう。例えば10Hzで1分間逆回転した場合、1回転あたり最大3個のATP分子が合成されると仮定して1800個のATPが合成されることになる。これは、そのままでは生物化学発光を用いても検出できない。一方、最近の1分子計測では蛍光標識したATP分子の結合解離をイメージングすることが出来る。しかし、この手法では、基質がADPなのかATPなのか区別できないため、この実験では使用できない。しかし、よく考えてみると、大抵の場合検出感度をきめるのは「数」ではなくて「濃度」である。したがって、検出したい分子数が少ない場合は反応体積を小さくすれば良い。例えば1800個のATP分子は、一辺が1μmの立方体に閉じ込めれば濃度は3μMとなり十分に検出可能な範囲である。これが、超微小溶液チャンバーの開発に至った動機である(16)。そこで、直径200 nm程度の磁気ビーズを回転しているF1-ATPaseを閉じ込めるために、深さ1.5μm、直径1.13μm、体積6fLの円柱状のチャンバーを作成した。まず、マイクロ加工技術を利用してシリコン基板に高さ1.5μm、直径1.13μmの円柱のアレイを作成し、これを鋳型としてシリコーン樹脂を加工した。その結果、表面に体積6fLの窪みを有するシートの加工が出来た。ここで使用したシリコーン樹脂はpolydimethylsiloxane (PDMS)と呼ばれるもので、可視光に対する透過性が高く顕微鏡観察との併用に適している。また、一度鋳型を作成してしまえば、大量生産が可能であるため安価なシートの作成も可能である。
       

【図1】Microfablication of Microchamber (from Fujita,Takeuchi; lab)

 
 
(Photo by Arata)  
   
【図2】The Brownian motion of Qdots in 1 fL chamber

 

 
     
【図3】Swimming bacteria in a chamber

 
 
     
【図4】Imaging of Single-Enzyme Activity

 

 

世界最小の溶液チャンバーアレイを用いた
酵素(b-galactosidase)1分子の活性イメージング
 
   
`Molecular wind-up car' 分子チョロQ project  

 
F1-ATPase1分子逆回転時のATP合成  
 
作成したPDMSシートを用いて回転しているF1-ATPaseを超微小空間内に閉じ込めた(図1)。この実験では、スペーサー用いてPDMSシートをガラス基板の上部に設置し、その間にできた空間にF1-ATPaseを含む溶液、磁気ビーズ、そしてADP、リン酸を含む溶液を順番に投入した。ここではあえて低濃度のATP(500nM)も一緒に添加している。これによって、ATP駆動で自立的に回転している(=機能している)分子を探し出すことができる。回転しているF1-ATPaseを発見した後、その上からガラスニードルを用いてPDMSシートをガラス基板に押し付けることでF1-ATPaseをチャンバーに閉じ込めた。その後、磁気ピンセットを用いて10Hzで1分間逆回転させた。先にも述べたようにこの条件では最大でも1800分子のATPしか合成されないが、微小空間の内部ではATP濃度は500nMから1μMまで上昇する。ところで、F1-ATPaseの回転速度はATP濃度に比例する(注1)。そのため、ATP濃度はF1-ATPaseの回転速度から求めることができる。すなわち、F1-ATPase分子をATP合成装置として使うと同時に、ATPセンサーと利用したのである(図2)。強制回転後に磁場を切り、その後F1-ATPase分子がATP分子を分解しながら回転する様子を観察した。その結果、逆回転を多くするするたびにF1-ATPaseの自発的回転速度は上昇し、速度上昇からATP濃度変化を測定することに成功した(図3)。その値にチャンバーの体積とアボガドロ数をかければ合成されたATPの分子数が求まる。実際のデータはまだ実験誤差が大きいためにばらついているが、1回転あたり3分子の合成を100%したとき、実際の反応効率は約77%であることが分かった。つまり、F1-ATPaseは、γの逆回転というきわめて単純な機械的操作によって高効率にATPを合成することが証明されたのである(16)。

【注1】 F1-ATPaseの回転速度は通常の酵素反応と同じようにミカエリスメンテン型のATP濃度依存性を示すが、ここでの実験条件はATP濃度が極めて低いため回転速度はATP濃度に比例すると考えて問題ない。
 
   
【図1】  
 
 

【図2】

 
 
   
【図3】  
 
   
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