野地研究室
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研究事例1
 
 1分子観察・操作技術
 
Single-Molecule works on F1-ATPase
 
1. 回転1分子観察の方法  
 
F1−ATPaseの回転運動は、光学顕微鏡を用いて1分子単位で可視化することが出来る。ガラス基板にF1-ATPaseのα3β3リングを固定し、直径2nmのγサブユニットに回転の目印となるプローブを接続する(図1)。初期の実験では、蛍光色素で標識したアクチン線維が用いられたが(6)、最近では褪色を気にしなくてすむプラスティックビーズ(7)や磁気ビーズなどが用いられる(8)。プローブの大きさは通常直径200nm程度でγサブユニットに比べてはるかに大きい。そのため、回転運動は粘性抵抗によって遅くなっている。また、粘性抵抗に影響を受けていない回転運動の計測をするには、直径40nmの金のコロイド粒子を用いればよい(7)。その場合は、可視化のためにレーザー暗視野顕微鏡と高速カメラが必要となる。以下に、これまでの1分子計測から明らかとなったF1-ATPaseの回転特性を簡単に整理する。
 
【図1】
回転1分子観察
 
   
 
2. トルク  
 

 

F1-ATPaseと比較して大きなプローブを接続した場合、F1-ATPaseは粘性抵抗に逆らってプローブを回転するため、
F1-ATPaseのトルクと粘性抵抗は常につりあっている。そこで、粘性抵抗をプローブの形状と回転角速度から計算することでトルクの算出が可能である。その結果、F1-ATPaseが発生するトルクの値は、おおよそ40pNnmであることが分かった(10)。この値は、ATP濃度や回転角度に依存しないことが分かっている。また、大腸菌由来のF1-ATPaseも同じ値のトルクを発生することが報告されている(11)。一方、高度好熱菌由来のV型ATPaseの場合、40pNnmよりも若干低いという報告がなされている(12)。トルクを発生するのはα3β3リングとγサブユニットの界面であるが、どの接触部位がトルク発生に関与しているのか分かっていない。これに関して、γサブユニットのC末端を大幅に切断した変異体を用いるとトルクの値が顕著に下がることが報告された(13)。この結果は、トルク発生部位を考える上で非常に示唆的である。
   
 
3. ステップサイズ  
   
 

ATP加水分解反応は、少なくともATP結合・加水分解・ADP解離・リン酸解離のステップに分けて考えることができる。ATP濃度を下げて回転観察をすると、F1-ATPaseは120°置きのステップ回転を行う(10)。このステップ間の待ち時間を解析することで、一回のATP結合によって120回転することが示唆された。また、直径40nmの金コロイドをプローブとして用いた高速回転計測から、この120度ステップ回転が90°と30°のサブステップに分解できることが分かった(7)。ただし、このステップのサイズは後に80°と40°であると修正された(注1)。80°サブステップの前の待ち時間がATP濃度に依存することから、80°サブステップがATP結合によって引き起こされることが分かっている。また、40°サブステップの待ち時間の解析から、40°サブステップの前には少なくとも2つの反応が起きることが示された。しかし、この計測からだけではその二つの反応が何であるかは分からなかった。その後、ATP加水分解に必須のアミノ酸残基に変異を入れた変異型F1-ATPaseと加水分解に時間がかかる基質アナログであるATPγSを用いた実験より、二つのうち一つがATP加水分解であることが示された(14)。一方、V型のATPaseはF型とは異なりATP結合とATP加水分解を同じ回転角度で行うらしい(12)。これは、V型においては、その回転機構がF1-ATPaseとは異なることを意味する。回転分子モーターの共通のメカニズムと、特有のメカニズムを区別して考えるうえで非常に重要な実験結果である。

【注1】 ただし、80°+ 40°という値は、ATP加水分解を遅くした条件で計測された値であり、正確には高速回転測定の条件とは異なる。この実験条件の違いがサブステップのサイズの違いの原因かもしれない。

 
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